【特集 Aug 2008】論文式試験各科目講評 ~監査論~

受験生の皆さん、3日間にわたる論文式試験、本当にお疲れ様でした。
この後は就職活動に多忙な毎日となるわけですが、気を抜いて体調を崩さないように気をつけてくださいね。

さて、今年の本試験問題について、maoでは科目ごとの講評を試みます。講評対象科目は「監査論」「租税法」「会計学(午前)」「会計学(午後)」「企業法」「経営学」「経済学」です。ここでは初日1科目目の監査論について講評を行っています。

【易化・良問化】
難易度・分量ともに例年ベースよりも明確に低下した。しかしながら、事例を用いた出題が多く、差がつく部分も多いと思われる。総じて、出題された問題はいずれも良問だった。 試験改革の中心である、 「暗記力の試験→応用力・論理性の試験」への転換は、 こと監査論に関しては見事に成功したと言って良い。 maoで予想したとおり、基準類を頭に入れているだけでは対応できない出題が出揃っており、現場での対応力が求められる問題たちであった。


【では、どこで差がつくのか?】
論文式試験が「知識を有している」ことを確かめる試験ではなく、(もちろん知識を有していることが大前提だが)「知識の運用能力・論述力・思考力」などを試す試験である、という本来の趣旨に立ち返ると、ただ知っている事柄を脈絡なく書き連ねても高得点は期待できないのではないかと思われる。
特に、事例問題はしっかりと問題提起をし、根拠とともに主張をするといった論理構成の組立をじっくり考える必要がある。分量の減少を踏まえれば、今回はそのような時間的余裕も確保できたはずである。 しかし、そのような訓練を積んでいる受験生はごく一部であろうから、基本的な論述をそつなくこなせれば、今回に関してはボーダーラインは確保できたのではあるまいか。

また、今回の出題の一部には選択式の問題があった。 採点結果に差をつけようと考えた場合、試験委員は、おそらくこの選択を誤った答案の論述には点数を与えないだろう。 決して難しい問題ではなかったのだが、慎重な選択が求められる。

【各問講評】

第1問

「事業上のリスク」に関する総括的な出題。

問題1の「企業環境の理解」に関する出題は、近年の不正は経営者が関与しているケースが多いという論述をした人が最多数を占めていると思われる。

問題2は事例問題。問い1は解答の間口が広い非常に面白い問題であるが、解答の際には「財務諸表全体レベル」「財務諸表項目レベル」それぞれの意味合いをよく吟味しながら解答する必要がある。例示から推察するに、財務諸表全体レベルのリスクは基本的に事例から抽出することで対応し、財務諸表項目レベルのリスクは自力で解答を導き出すという趣旨であったろう。解答上のポイントとして、財務諸表項目レベルのリスクは、できるだけ具体的な勘定科目を答案に記載することが必須だと思われる。

問題2・問い2は今年の監査論の問題の中で最難関の問題と言って良いが、同時に最も「良問!」と思った出題でもある。おそらく差が付くポイントとなるのはこの問題となるだろう。大半の専門学校では「特別な検討を要するリスク」について詳細な説明をしていないものと思われ、多くの受験生は「株式交換」「業容拡大」などの言葉から手探りで解答を作成しているだろうが、実はここで着目すべきであったのが配布された基準集。監査基準委員会報告書29号・第103項には特別な検討を要するリスクか否かの判断基準として3つのポイントを記載している。これを見つけられたかどうかが勝負の分かれ目だったのではないか。
もっとも、監査論は昨年まで暗記科目の筆頭ともいえる科目であり、今年も記述スピードを重視した結果「基準を紐解くまでもなく答案を作る!」という方針でいた受験生は多いと思われるので、実はこういう形で正解にたどり着けた受験生はむしろ少数派だろう。

第2問

経営者を軸に置いた監査人の適格性要件に関する総合的問題。

問題1は、監査契約に関する問題点を抽出し、それに対して論じるという2段構えの問題。3つのうち、問題点は「2」と「3」であるが、まんいち「1」を選んでしまった場合には論述部分の採点がされない可能性がある。差がつきやすいスタイルの出題である。
1は新しい事業所を往査先に「追加して」欲しい、という要求である。確かに監査人は往査先の決定も自己の判断にて行う必要があり、その点で当該要求は契約上の問題点として挙げうるとも考えられるが、あくまで経営者の要求は往査先への「追加」であり、監査人が必要と認めた事業所についての往査を妨げる意図は無いため、契約上の問題点として指摘するには及ばない。少なくとも2、3と比較した場合、問題点としてのシリアスさは圧倒的に劣後する。
2は内部監査業務の受託そのものであり、上場会社では法的にも禁止されていることであるから、間違いなく指摘しなければならない。もちろん「法律で書いてあるじゃん」という論述だけではなく、その理由までしっかりと記載すること(特に難しいわけではないが)。
3はいわゆる成功報酬であり、公正不偏の態度に影響を与えるものであるという論述ができればよい。なお、公正不偏の態度は「心」の状態を指す概念なので、報酬体系にかかわらず心を公正に保つことは不可能ではないが、その保持を具体的に支えるためには報酬は意見の適否に影響しないように契約を改めなければならない。

問題2は経営者確認書に関する問題である。問い1は問題1同様、1~5のうちの問題点をしっかりと指摘することが必須。正解は1であるが、それ以外の選択肢を選んだ場合には論述部分の採点がされない可能性がある。
記載事項1は「貴殿の監査を受けているので」という部分が余計である。これに「財務諸表の作成責任が経営者にあること」の記載が欠けているということを加えながら論じると二重責任の原則に関する言及がやりやすくなる。
問い2は意見表明の方法に関する論点であるが、「不表明」か「不適正」かという基本的な論述ができれば問題は無い。経営者確認書が提出されない場合、監査の前提となる事項が記載内容に含まれるため、原則として意見は表明されないが、ここではそれに対する言及は補足的なものにとどめるべきである。すなわち、「経営者確認書が入手できない場合の意見表明について述べよ」という問題ではなく、「なぜ不適正ではいけないのか?」という問題なので、その点について論じることに行数を割いたほうが良い。

【ボーダーライン】
基本的な問題が多いため、論述構成で差がつくことが考えられる点は前述の通り。「解答速報と同じだから満点」というわけには行かないと思うので要注意(事実、合格点に達していない解答速報も毎年見受けられる)。その点を考慮し、辛めの採点をした場合のボーダーラインとして以下の通り予想する。

予想合格素点ラインは、
第1問が25~30点、第2問が20~25点。 (論述力が優れ、全問で論点を正確かつ網羅的に書けた人の素点率を80%とした場合) トータルで45~50点くらいで十分合格ラインだろう。

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