【特集 Oct2007】試験制度改革!08年新生本試験の「心得」

平成19年10月24日、公認会計士・監査審査会の公認会計士試験実施検討小委員会、公認会計士試験実施検討グループが「公認会計士試験実施の改善について」を公表した。すでに中間報告にて概要は伝えられていたが、早くも08年の試験より「新々制度」下での試験が始まることとなった。10月特集は「緊急特番」。受験生にとってこの改善が「吉報」なのか「凶報」なのか。。。改善策を徹底的に解剖し、受験生が取るべき対策を考察する。

なお、予定していた「計算科目の達人になるために 後編」は来月の特集としてお送りする。

テーマ1 「改善」の全貌を探る


何はなくとも、公表された改善策をじっくりと分析してみよう。08年の試験で早速改善される点は、以下の通りである。(「公認会計士試験実施の改善について」を要約して掲載)

【短答式試験】

・位置づけ
短答式試験は、「公認会計士になろうとする者に必要な専門的知識について、基本的な問題を幅広く出題することにより、論文式試験を受験するために必要な知識を体系的に理解しているか否かを客観的に判定する試験」であると言う点を徹底する。

・試験問題の簡素化
「できるだけ長文や複雑な組み合わせの解答を求めるものは避けること等により簡素化」する。

・配点
配点は、問題用紙等に明示することを条件に多様化を認める。

・日程
現行の「週末2日」から「週末1日」に短縮。科目あたりの試験時間は適宜短縮される。


【論文式試験】

・試験範囲
必要な知識を体系に理解していることを前提に、試験範囲を絞り込むことで、「受験者の思考力、判断力、応用能力、論述力等を問う試験とする」。

・法令基準集の配布
企業法・民法に加え、「新たに会計学、監査論、租税法についても、法令基準集を受験時に配布した上で試験を実施する」。

・日程
「金土日といった、連続する平日1日、週末2日の試験とする」。


要旨をまとめるだけでも、驚くほどの変貌ぶりであることが分かる。最大のポイントは、「短答式試験と論文式試験で、それらの役割を明確に区分したこと」である。すなわち、改善策では、短答式試験を「必要な知識を体系的に理解しているか否か」という知識の量を問う試験であると位置づけ、論文式試験を「思考力、判断力、応用能力、論述力等」という、知識の運用能力を問う試験であると位置づけている。その位置づけに基づき、試験範囲の簡素化・絞込みや条文基準集の配布等の具体策が明示されている、というのが改善策の全貌である。

テーマ2 「改善」により試験はどう変わるか。


改善策を一通り読むと、どうしても形式面での変化に気をとられがちであるが、大事なのは、その改善策に伴う「出題傾向の変化」を捉え、それをもとに「あるべき試験対策」を練ることである。改善策の要旨を把握したところで、さらに深い分析を行う。


・短答式試験の問題はどう変わるか。

短答式試験の変化を一言でいえば「広く・浅く」への転換である。特に06年・07年の試験は(時間が長くなったこともあるが)試験問題の長文化が進み、解き手にとってかなりの疲労を伴うものであっただろうが、今回は「できるだけ長文や複雑な組み合わせは避ける」と明記された。もっとも、短文=簡単という公式は必ずしも当てはまらないため、相当程度の長さは維持されるとは思うが、あくまで難易度、という意味では明らかに低下することが見込まれる。

しかし、そうはいっても合格者と不合格者を切り分ける必要があるのは07年までと何ら変わりはない。どこかで「実力のある受験者」と「成長途上の受験者」を識別するための工夫が凝らされることとなる。従来は応用的な論点を出題することで差をつけさせるという手段が講じられていたが、08年試験では応用的な論点の出題は極力手控えることとなっている。また、TOEIC等のように、制限時間いっぱいでも間に合わないほどの出題を施すことも想定しづらい。

では、どうするか。「トリック」の多用である。注意深く読まなければ誤答してしまうような地雷を、今まで以上に多く埋め込むほかに、実力者のみを合格させる有効な手段はない。知識が体系的に整理されていなければ混同してしまうような論点が、今後の出題の焦点となるということでもあろう。


・論文式試験の問題はどう変わるか。

さて、論文式試験である。こちらも出題範囲の絞込みによって、見かけ上の難易度は大きく低下すると思われる。今までは大半の受験生が白紙になるような「埋没問題」も珍しくなかったが、出題範囲が明確に絞られれば、このような事態は縮小することは間違いないだろう。

ただ、気をつけなければいけないのが「問題の質」である。条文基準集が配布されるということは、今までのような「売買目的有価証券の評価について述べよ」という、基準の知識を問う問題は出題されにくくなるだろう。これでは基準の「写経」をさせるだけになるからだ。論文式試験で問われるのはあくまで「思考力、判断力、応用能力、論述力等」である。基準を覚えているかどうか等は短答式試験で試されるものであり、それをクリアした人に対して、改めて知識の有無を問うことはしない、という姿勢が今回の「改善」では明確に示されている。

したがって、「AとBとで会計処理方法が異なる理由」や、「仮に○○という会計処理方法を行った場合の問題点を述べ、併せて基準にて求められている会計処理の理論的背景を論ぜよ」など、法令基準集を見ても載っていないことが出題される可能性が大きくなる。若干恐ろしい話になるが、専門学校のテキストの殆どが会計基準・監査基準・監査基準委員会報告書等を焼きなおして作成されていることを考えると、このような問題に対応するのは、カリキュラムに「おんぶにだっこ」になっている受験生にとっては限りなく難しいものとなる。

裏を返せば、限られた時間の中で勉強を続けている社会人受験生等にとっては、必ずしも基準を暗記しなくても対応できる幅が広がり、チャンスが拡大したと解釈することも、当然可能だ。

テーマ3 では、どうすればいいのか。


ここまでの分析で、なんとなく「今までの勉強法で太刀打ちできるのか?」という不安が湧いてきた方も多いと思う。しかし、「新々制度」の試験に対応する際に気をつけるべきことは、実際にはさほど大きくは変わらない。のっぺらと基準等を暗記するだけで合格できる、というのが迷信であることは、07年まででも大差なかったのだから。


・対策1 短答式対策として、最低限の暗記は継続すべし

短答式試験免除者は関係の無い話だが、08年の短答式試験を受験する方は、どうしても「知識」を問われる試験への備えをしなければならない。というわけで、しっかりと基準等の暗記を行うことは今までどおりであろう。

ただし、07年までの試験傾向から分かるとおり、暗記といっても表面的に覚えることがそのまま得点に直結することはまれである。前述したが、08年は「トリック」の多用が予想される。地雷を踏まないためには、「有機的に」記憶を結び付けていく工夫が欠かせない(「有機的な記憶」という概念については、今までもメルマガ等でお伝えしてきたが、重要性に鑑み近日中にメルマガにて再掲する予定だ)。


・対策2 基準の「結論の背景」には要注意

今までもほぼ同様であったが、単純な知識を問われる問題から「思考力」問題へと移行するとなると、企業法で言うところの「立法趣旨」、基準で言うところの「結論の背景」が重要性を増すことは容易に想像できる。条文基準集が配布されるとはいえ、基準集に前文や結論の背景の記述が載っていないケースも考えられる(そうしないと出題者側は問題作成及び採点でかなりの苦労を強いられるはずだ)し、よしんば載っていたとしてもそれを一から調べていては到底間に合わない。「なぜこういう規定があるのか?」「こういう規定が無かったら、どうなるのか?」は常に意識しておくこと。


・対策3 答案作成の技法を身につけよ

思考力等を問う試験に移行した場合に、試験委員にとって難しくなるのが「客観的に採点すること」である。今までは基準を暗記してきた受験生が殆ど「基準の再現」をしてきてくれていたから、それほど採点は難しくない。しかし、基準集が配布されるようになれば、基準を再現させる問題は出題できず、結果、答案が多様化する。これを分け隔てなく採点することは非常に難しく、どうしても主観を交えざるを得ない。裏を返せば、受験生は「印象の良い答案」を意図的に生み出すことが簡単になるということだ。「結論を明確にする」「キーワードをしっかりと織り込む」「字を丁寧に書く」この程度のことを常に意識しておくだけで、実は合格は一気に近づくのかもしれない。

改善策を読んだだけで「あ、今年は基準集が配られるんだったら、簡単だ」と安易に考えるのは適切ではない。改善に伴う変化への対応力が、もうすでに試されている時期に来ているのである。しかるべき対策を採って、「こんなはずじゃ…」という事態に陥らないようにして欲しい。

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